グローバル化する世界で存在感を増すアジア 多面的アプローチでその現代的課題に取り組みます

共同研究

当センターでは、所員、客員教授・研究員はもちろん、内外の専門家が集まり以下の共同研究グループを組織し、研究を行っています。

アジアにおける民主主義の危機と地域秩序変容

研究代表者
大庭三枝
研究分担者
[学内]
石井梨紗子、大川千寿、後田多 敦、村井寛志
[学外]
佐橋 亮
研究の内容

本研究プロジェクトは、アジアにおける民主主義に関わる課題がいっそう顕在化・深刻化し、各国の政治および社会のあり方を不安定化している状況と、国際秩序の大きな動揺と連動しつつアジア地域秩序が大きく変容しつつある状況、これらの両方に着目する。そして、この地域の民主主義の、危機的状況は地域秩序のあり方をどのように規定するのか、また地域秩序の変化がこの地域の民主主義、および政治・社会にどのような影響を与えているのか、といった、この両者の連動性について、様々な角度から考察することを目的としている。
すでに2000年代中盤より民主主義の後退傾向が指摘されていたが、2010年代に入ると先進民主主義国でのポピュリズムの蔓延を受け、世界的な民主主義の後退についての懸念が広がった。アジアにおいても民主主義の後退をうかがわせる現象が、様々な形態をとりつつ顕在化している。
本研究は参加メンバーがそれぞれ専門とする国・地域について上記の様々な要因の存在可能性を念頭に置きつつ、民主主義を巡る現状とその課題についての検討を進める。また、現代における様々な国・地域に焦点を当て、その状況の比較を行うと共に、それぞれの国・地域の民主主義を巡る諸問題の歴史的経緯や要因を可能な限り明らかにすることも企図する。そして本研究グループ全体として、戦後国際秩序の基盤をなしてきた世界的な民主主義の展開のなかで、アジアの現状がどのように位置づけられるのか、また、こうしたアジアの民主主義を巡る状況と、アジア地域秩序の変容がどのように関連しているのか、という大きな問いに対する暫定的結論を見いだすことを目指す。

研究活動
  • 月にほぼ1回のペースで、研究メンバーのプロポーザルや、外部講師の講演を内容とする研究会を行う。年度の終わりには総括的な研究会を行い、次年度に向けた準備作業を進める。
  • 外部講師を招聘して公開研究会を開催し、研究メンバーのみならずアジア研究センターの知的活動の深化拡大に貢献する。
  • 各研究メンバーは、関する書籍や一次資料の収集、分析を行うとともに、夏期休暇や冬期休暇等を活用して、海外における聞き取り調査および現地調査を行う。

アジアにおけるコミュニティの再考 

研究代表者
高城 玲
研究分担者
[学内]
梅崎かほり、泉水英計、知花愛実、中林広一、村井寛志
[学外]
永野善子、持田洋平、八尾祥平、山本博史
研究の内容
本共同研究は、アジア地域が経験してきた/している歴史的動態をコミュニティというキーワードに注目して各地域・事例の比較研究を行うことを目的とする。それぞれ多様な存在どうしが矛盾や競合を含みながら、場所や歴史的な状況に応じて常に変化する緩やかな相互影響関係の集まりとしてのコミュニティにも注目することで、均質性や境界を前提とする従来の伝統的なコミュニティ概念を各地域の具体的事例から再考する。
 
具体的な研究の焦点としては (1)人の移動を契機にした移動先や出身地との新たな相互影響関係の中で生まれる移民や移住のコミュニティ、(2)多様な背景をもった個が活動への参加を通じて生み出される運動やNGOのコミュニティなどが考えられる。
研究活動
本共同研究には歴史学、社会学、文化人類学、国際関係論、地域研究など多様な背景を持った共同研究者が参加し、対象とする地域も沖縄などの日本、中国、台湾、フィリピン、シンガポール、タイと幅広い。それぞれの視点や地域に関する本共同研究の調査研究を推進し、外部研究者も含めた共同研究会を定期的に開催して相互に議論を交換することで、アジアにおけるコミュニティの再考と歴史的動態について検討を進める。

アジア都市の生活圏

研究代表者
山家京子
研究分担者
[学内]
石井梨紗子、石田敏明、上野正也、柏原沙織、重村 力、須崎文代、 曽我部昌史、孫 安石、中井邦夫、
松本安生、吉岡寛之
[学外]
鄭 一止、西堀隆史
研究の内容

コロナ・パンデミックは私たちの生活、そして都市の変容を促したが、身近な生活圏に目が向けられたことも大きな影響といえる。これまで買い物や通勤・通学などもっぱら利便性が重要視されてきたが、自然豊かな遊歩道や公園、サードプレイス(居場所)など、生活を豊かにする環境が求められるようになった。一方、アジアの多くの都市では、公共交通や自動車ではなく自転車やバイクによる移動により、欧米や韓国、日本のそれらとは異なる生活圏を構成しているように見える。そして、そのあり様がアジア固有の景観を形成しており、アジア都市に即した生活圏へのアプローチが求められる。
本共同研究は、アジア研究センター共同研究「東アジア4国際都市の脆弱地区の調査、ならびに環境社会再生への方法の探求」(2013-17)「アジアの社会遺産と地域再生手法」(2018-22)の成果を引き継ぎながら、近年のアジア都市の生活圏のあり方について明らかにすることを目的とする。

研究活動
  • 研究テーマに即した調査・研究の実施
  • 研究討論会の開催

アジアにおけるツーリズム・マーケティングに関する研究

研究代表者
高野倉雅人
研究分担者
[学内]
佐藤公俊、行本勢基、中見真也
[学外]
Mohd Hemli Bin Ali、チン・イン・イユー
研究の内容
アフターコロナ時代のアジア地域を対象に,フィールド調査と各種のビジネスデータを活用して,地域の個性ある資産を活用したツーリズム・マーケティングのあり方を明らかにすることを目的とする.ツーリズムの主題は,旅先での観光だけではない.顧客の旅先での期待を高め,移動手段を含めた価値ある体験をいかに組み立てて,他者と共有するか,マーケティングのアプローチが必要となる.アジアには数多くの魅力ある観光資源がある.各研究分担者の専門分野を活かして,アジア地域に特有の歴史と文化に立脚したツーリズムのフレームワークの構築を目指す.
研究活動
  • 研究テーマに即した国内および国外調査・研究の実施
  • 研究討論会の開催

地震・気候災害に対するアジア地域の災害レジリエンスの比較研究

研究代表者
朱牟田善治
研究分担者
[学内]
荏本孝久、落合 努、佐藤孝治、山家京子
研究の内容
本研究では、アジア地域における災害の軽減化に向けて、災害研究を行っている研究者、防災対策機関の研究者などとネットワークを構築し、地域レジリエンス強化に向けた現状の課題とその解決策を整理・提言することを目的とする。まず、経済格差があり、水害を含む災害が多発しているタイおよびスリランカに焦点をあて、両国の地域特性の違いを比較分析し、地域特性に応じた災害レジリエンス強化のあり方について両国の基本的考え方を整理する。この調査結果を踏まえた対応として、技術革新が著しいデジタル化に伴う最新のセンシング技術や防災情報ネットワーク技術を基盤とした、早期警報システムの活用可能性とその定着にむけた課題についてアジア地域の専門家と議論し、事例分析などを通じてその成果をとりまとめる。
研究活動
アジア地域に着目して、以下の計画のもとに研究を推進する;(1)アジア防災センターと共同研究契約を締結し、インドネシア、タイ、およびスリランカの防災機関や専門家との人的ネットワークを構築、(2) 対象地域の災害の特徴及び観測体制と警報発出及び緊急対応に関する文献調査,(3)アジア地域の災害危険度および早期警戒システムの現状に関する文献調査、(4)アジア地域で大規模な自然災害を被った地域の現地調査及び防災機関との意見交換、および(5)2025年度を目途に開催予定の災害研究に関連したワークショップに向けた準備活動などを実施する。

装飾文様から捉える文化の伝播・交流

研究代表者
中林広一
研究分担者
[学内]
阿部克彦、角山朋子、藤澤茜、松浦智子
[学外]
門田園子
研究の内容

本研究においては、装飾文様の分析を通じて、文化の伝播や異なる文化間での交流について検討する。
装飾文様は単なる模様ではなく、その背景に製作者側の意図が込められたものである。そして、こうした装飾文様には外部との交流の中で作り上げられてきた側面もある。交流の中で図案の製作者は刺激を受けて新たな文様を生み出すし、また交流の中で生じた需要が文様に強く影響を及ぼすこともあった。従って、装飾文様に対する研究は人間・文化への理解の深まりをもたらす。
本研究では、このような装飾文様が特定の地域において生み出された背景にとどまらず、その伝播と伝播先での受容のあり方についても視野に入れた研究を進める。特に研究班メンバーそれぞれが専門とする地域や時代に当てはめつつ明らかにしようとするものである。

研究活動

本研究グループは、多様な分野の研究者から構成されているが、まずは多様なディシプリンが展開するグループの中で、研究会を積極的に開催して方針の精緻化と情報の共有を進めていく。また、共通テーマとして西村庄治商店の所蔵する資料の調査を進めていく。西村庄治商店は江戸から明治期にかけての資料を多く所蔵しているが、特に裂帳(布の見本帳)には膨大な数のデータの集積がなされているので、これらを中心として分析を行う予定である。

アジアにおけるサービス産業の相互浸透

研究代表者
行本勢基
研究分担者
[学内]
徐寧教、王中奇、中見真也、山本崇雄
研究の内容

日本企業の直接投資を中心に形成されてきた東アジア、東南アジアの国際貿易構造に近年、大きな変化が見られるようになった。韓国を発祥とする音楽がK-popとして世界中を席巻し、製造業を中心とした国際貿易構造に新たな展開が加わるようになった。更にはeスポーツをはじめとしたゲーム産業の隆盛は、日本のみならず韓国、中国、そして広く欧米諸国にまで広がり、ボーダーレスの様相を呈している。こうしたアジア諸国におけるサービス産業の相互浸透を国際経営論、国際マーケティング論の観点から解釈することが本共同研究の大きな目的である。日本を頂点とする従来型の発想ではなく、アジア諸国と平等に、もしくはその先進性をどのように「クールジャパン戦略」へ反映していくのか、日本の優位性を並列的に取り扱いながら、学内外の専門家、企業関係者を巻き込みながら新たな知見を得る機会としたい。

研究活動

共同研究者の各研究テーマ(小売サービス、ゲーム等)に即した国内、および国外調査・研究の実施
企業関係者をゲストスピーカーとしてお呼びする研究報告会の開催
公開シンポジウムの開催

 

アジアにおける日本企業の技術移転密度の国別差異

研究代表者
王中奇
研究分担者
[学内]
曹咏梅 姜明采
[学外]
廣田律子
研究の内容

本研究は、アジアにおける日本企業の技術移転の「密度」(移転の頻度・深さ・双方向性)の国別差異を、日本語人材の量と質という観点から解明することを目的とする。日本企業の技術は暗黙知への依存度が高く、その移転は現場でのコミュニケーションや技術文書の理解に大きく左右される。本研究では、中国、韓国、台湾、タイ、マレーシアなどを比較対象とし、日本語能力が技術移転の進展や現地経営の自律化に与える影響を多国籍・多分野の視点から分析する。

研究活動

  1. 先行研究の整理と理論枠組みの構築
  2. 日本国内およびアジア各国での企業・拠点調査
  3. 研究会の定期開催と成果の共有
  4. 実務家との意見交換やシンポジウムの実施

 

終了課題

湖南省藍山県過山系ヤオ族の言語学的研究 2015年3月終了
北東アジアの秩序再編と今後の展望 2015年3月終了
東アジア近代における伝統とその変容 2015年3月終了
東南アジアから西アジアにおける民主化と経済発展 2017年3月終了
東アジア4国際都市の脆弱地区の調査、ならびに環境社会再生への方法の探求 2017年3月終了
アジアの水に関する総合的研究 2017年3月終了
東アジアにおける安全保障秩序の変動 2018年3月終了
東アジアにおける東西文明の出会い或いは衝突 2018年3月終了
アジア地域におけるサプライチェーンリスクマネジメントに関する研究 2018年3月終了
2015年ネパール大地震(Mw7.8)による被害と地域社会への影響 2018年3月終了
東アジアの国際経済・ビジネス変遷と現状そして今後の展望 2019年3月終了
アジア圏における文化の生成・受容・変容 2021年3月終了
植民地国家と近代性:アジア諸国を中心とする比較研究 2021年3月終了
アジアの政治発展 2023年3月終了
アジアの社会遺産と地域再生手法 2023年3月終了
東南アジア地域における6次産業ビジネスモデルに関する研究 2024年3月終了
アジア地域の災害軽減化と防災・減災ネットワーク構築に関する研究 2024年3月終了
アジアの国際ビジネス環境 2025年3月終了
アジアのデザインに見る文化の性質 2025年3月終了

共同研究グループによる刊行物

「アジアの国際ビジネス環境」グループ プロジェクトペーパー

表紙
目次
アジアにおける米国と中国の経済対立
秋山 憲治
南インド旅行:雑感
秋山 憲治
タイ駐在員時代(1988~1993 年)の回想録
石原 伸志
東南アジア諸国連合(ASEAN)メコン地域における鉄道貨物輸送拡大についての考察
魚住 和宏
中国における越境電子商取引の実態と変革
孔 令建
現地生活から得た中国理解と異文化対応
武井 克真
研究随想
田中 則仁
奥付

「アジア都市の生活圏」レクチャーシリーズ 2024-2025

Vol.1 Touristification, gentrification, pandemic, and living heritage
-Recent urban transformation at a World Heritage Site and a non-UNESCO historic site 
Khoo Suet Leng(マレーシア科学大学 准教授)
柏原沙織 (神奈川大学建築学部・特別助教)
Vol.2 ハノイ都市部の生活圏
竹森紘臣(Worklounge 03- Vietnam 代表取締役)

「アジアの社会遺産と地域再生手法」レクチャーシリーズ 2020-2021

Vol.1 客家の円型土楼-その建築様式と集住の知恵
重村 力(建築家・工学博士)
Vol.2 ハンドメイド・アーバニズム
尹柱善(建築都市空間研究所まち再生センター長)
Vol.3 台湾における都市の歴史的環境保全
藤岡麻理子(横浜市立大学グローバル都市協力研究センター特任助教)
Vol.4 竹の活用で1分の1から1万分の1まで-カレン集落の再生プロジェクト
Terdsak Tachakitkachorn(バンコク チュラロンコン大学建築学部 Assistant Professor)
Vol.5 ベトナム・ハノイ 変化する都市の文化遺産
柏原沙織(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻 特任助教)
Vol.6 ベトナム・サイゴンの建築と都市の文化
李暎一(一般社団法人 アジア建築集合体 会長)
Vol.7 メトロマニラにおける参加型社会住宅People’s Plan:参加の価値の再考
白石レイ(山口大学大学院創成科学研究科准教授)
Vol.8 近現代モンゴルーウランバートルにおける定住と都市
八尾 廣(東京工芸大学工学部建築学系建築コース教授)